(エピローグ)
和郎は、このお手紙を読み終わって、号泣した。家族のみんなも涙が止まらなかった。
彼女は最後まで私や子供たちの将来のことを憂って亡くなって行った。そして、自らを犠牲にして、全身の倦怠感や激痛で苦しいときでも寿命をなんとか延ばそうとしてもがき、その苦痛をがまんしていた。それを思うとたまらなく涙があふれた。
最愛の節子を亡くしてしまった和郎の心境は、まるで大友家持の万葉歌のようであった。
それは、『うらうらに 照れる春日に雲雀あがり 情悲しも独りしおもへば』という歌である。
その意味は、「いい春の日に、天高く雲雀が鳴いておりますが、最愛の妻を亡くして我が心の内は悲 しいことです。独りでもの思いに耽っている私は……」ということです。
この手紙を読んだ和郎は、節子のためにもできるだけ永く生きて行こうと決意した。
(完)
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